
工事担任者の資格は区分が多くありますが、中でも最終的には総合種の取得を目指している方も多いのではないでしょうか。
本記事では工事担任者総合種の資格概要や試験対策について解説します。工事担任者AI・DD総合種の資格概要

工事担任者はAIとDDに分かれている
工事担任者の資格はAI(アナログ)回線、DD(デジタル)回線の資格に大別され、それぞれ第1種〜第3種とありますが、総合種はこれらの資格を組み合わせた資格です。たとえば、AI第1種とDD第1種を取得すれば、AI・DD総合種を取得することが可能になります。
また、工事担任者総合種が行える業務内容は、アナログ伝送路設備又はデジタル伝送路設備に端末設備等を接続するための工事業務となりますので、詳しくは以下の表を参考にしてください。
- AI第1種
- AI第2種
- AI第3種
- DD第1種
- DD第2種
- DD第3種
- AI・DD総合種
具体的な仕事内容
工事担任者は、主に電気通信工事や電気設備工事、端末設備の施工業務を管理・監督します。つまり施工管理者として、通信設備関係の工事を管理する際に、工事担任者の資格が必要です。
また、具体的には光ファイバ(光通信の送受信に必要な設備)や、光ファイバに関する設備を接続する工事において、約5種類の業務を管理します。
- 設計
- 施工
- 安全
- 運用
- 保守面
情報通信関係の工事現場で、管理業務を目指している方は特に必要な資格でもあります。
就職や年収での待遇
情報通信関係の工事会社へ転職する際に、工事担任者の資格を保有しているとアピールポイントになりますし、会社によっては即戦力として採用を検討することでしょう。
そもそも施工管理業務は有資格者でなければ担当できないため、工事担任者を保有している人材を求める傾向にあります。
また、年収に関しては厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によると、男性474.8万円・女性333.0万円といった水準です。(35~40歳代、平均勤続年数男性13.3年、女性5.9年 の場合)
情報通信設備は、高度情報化社会へ進む日本・世界で、今後もより必要とされる設備ですし、設置・管理のできる人材も求められるでしょう。ですので、需要のある資格として期待されます。
工事担任者の資格の中でもっとも需要が高い
工事担任者のAI・DD総合種は、工事担任者の資格の中でももっとも需要の高い特徴もあります。その理由の1つは、前段で触れた社会情勢・時代にマッチした資格だからです。
スマート家電やIOT機器を正常に動作させるには、通信設備がなければ成立しません。そして、情報通信設備は、有資格者が設置・管理しなければいけませんし、専門知識や技術も必要です。
さらに5G技術が今後本格的に普及させる流れに入れば、情報通信設備工事の作業担当者と施工管理者、つまり工事担任者のAI・DD総合種有資格者も多くの工事会社に求められます。
総合種の難易度は高く、合格率は20%程度

工事担任者の中で最も難易度が高いのは総合種
工事担任者の総合種は、合格率の平均が20%代前半と資格試験の中では最も合格率が低くなっています。なぜなら総合種は、工事担任者AI・DD1種の出題範囲から問題を作成しているからです。ただ、合格できれば、AI1種とDD1種の工事範囲を網羅しているので、資格手当アップや仕事の幅を広げやすいメリットも得られます。
難易度の高い資格ですが、試験対策の時間を確保できる方や年収アップや仕事の幅を広げたいと考える方は、受験を検討してみてはいかがでしょうか。
- 2019年…21.8%
- 2018年…25.4%
- 2017年…21.0%
- 2016年…22.9%
また、工事担任者のAIとDD・1~3種の合格率を以下に紹介します。また、今回は2019年(1回目)の合格率を参考にしています。
- 工事担任者AI・1種36.6%
- 工事担任者AI・2種27.4%
- 工事担任者AI・3種47.4%
- 工事担任者DD・1種26.3%
- 工事担任者DD・2種18.3%
- 工事担任者DD・3種41.9%
総合種は試験範囲が広いため難易度が高い
総合種の難易度が高い理由はその出題範囲の広さにあります。総合種の資格は、先ほどもご説明した通りAI・DDの双方の資格を取得する必要があります。また、工事担任者の中で最も合格率が低く、難易度も特に高い難関資格です。
その大きな理由は出題範囲の広さです。工事担任者AI・DD総合種は、AI1種とDD1種の試験範囲を全て含めているため、試験対策の範囲もその分広くなります。
また、AI1種は、工事規模に関わらずアナログ電話回線・ISDN回線接続工事に携われますし、DD1種はISDNを除いた全てのデジタル回線工事に携わることができるので、それぞれの難易度も高い特徴があります。
難易度のレベルとしては、総合種が最も難しく、次いで1種・2種・3種といった順番です。許可されている工事の範囲も同様の順番となっています。
難易度の高さを理解した上で、総合種への受験を判断してみてください。
総合種の勉強方法

ここでは工事担任者の試験のための勉強方法について解説します。
テキストで理屈を理解しよう
最もシンプルかつ重要な勉強方法でもあるのが、テキストで理屈を理解することです。今すぐ知識を付けたいと思っても、何もしなければ意味がありません。
工事担任者の試験は電気通信工事関係の基礎知識をはじめ、ネットワークやセキュリティ、法律(法規)などからも出題されるのが特徴です。また、各科目を暗記するだけでなく、技術や法規の理屈や意味を理解する必要もあります。
なぜなら専門用語に関する暗記問題の他、理論や理屈を問う問題も多いからです。テキストで解説されている内容を、人に説明できる程に理解できるよう意識しましょう。
演習問題を反復しよう
工事担任者のテキストで、各項目の出題範囲と内容を理解できたら、演習問題を何度も解く段階へ移行しましょう。テキストは暗記や理屈を理解する場合に適していますが、解き方や出題傾向を掴むことは難しいところです。
ですので工事担任者の過去問をまとめた問題集や、過去問を参考に作成した演習問題を購入し、さまざまな形式の問題を解きましょう。また、単に問題を解くだけでなく、間違った問題はテキストで復習します。
さらに自分が常にどこで間違えやすいのか、どんな内容を覚えられないのか苦手分野も確認するのが大切です。苦手分野を確認できたらテキストも活用しながら反復学習し、少しでも漏れやミスを減らすよう対策を施します。
総合種の試験を突破するためのポイント

科目免除制度を利用しよう
工事担任者には科目免除制度があり、主に4つの方法が存在しますので、こちらの活用も検討しましょう。これらの方法を使うことで3科目のうち1〜2科目、組み合わせれば全ての試験を免除することが出来ますので、試験の負担を大幅に削減することが可能です。
- 科目合格
- 資格
- 実務経験
- 認定学校修了者/修了見込み者
科目合格による免除
工事担任者AI・DDには、過去に同資格試験を受験し指定科目を合格していれば、科目合格による免除制度を受けることができます。
ただし注意点があり科目合格による免除制度の適用期間は、前回の科目合格した試験日から数えて3年以内のうち最後の試験の申請受付期間最終日と定められています。
ですので、過去の試験から3年を超える場合は、一部科目を合格していたとしても免除されません。
特に過去の受験日と今回の受験日は確認しておきましょう。ま田、免除される科目は、各資格の「基礎科目」のみです。
資格による免除
資格による免除とは、特定の資格を取得していると工事担任者AI・DDの「基礎」もしくは「基礎・法規」を、免除してもらえる制度のことです。
また、特定の資格と免除科目は、以下の通りです。(AI・DD総合種の場合)
- 伝送交換主任技術者・基礎と法規
- 旧第二種伝送交換主任技術者・基礎と法規
- 線路主任技術者・基礎と法規
続いて無線関係の資格と免除科目を紹介します。
- 第一級総合無線通信士および第二級・基礎
- 第一級海上無線通信士および第二級・基礎
- 第一級陸上無線技術士および第二級・基礎
さらに工事担任者の資格取得によって、以下の科目も免除されます。
- アナログ第一種~第二種・基礎
- デジタル第一種~第二種・基礎
- AI第一種~第第二種・基礎
- DD第一種~第二種・基礎
- アナログ・デジタル総合種・基礎と法規
- アナログ第一種+デジタル第一種・基礎と法規
該当する資格を保有している方は、免除制度へ有効活用してみましょう。
実務経験による免除
実務経験による免除とは、特定の通信工事に関する実務経験(仕事として携わること)があると一部科目を免除してもらえる制度のことです。
電気通信工事へ未経験から転職する方は活用の難しい制度ですが、既に数年働いている方は実務経験による免除制度を活用してみましょう。
ちなみに工事担任者AI・DD総合種の免除科目及び条件は、以下の通りです。
- 端末設備等を接続するための工事に1年以上
- 端末設備等を接続するための工事に2年以上
- アナログ伝送路設備に端末設備等を接続するための工事(電気通信回線の数が51以上のものに限る)
及び総合デジタル通信用設備に端末設備等を接続するための工事(総合デジタル通信回線の数が毎秒64キロビット換算で51以上のものに限る)
並びにデジタル伝送路設備に端末設備等を接続するための工事(接続点におけるデジタル信号の入出力速度が毎秒100メガビット(主としてインターネットに接続するための回線にあっては、毎秒1ギガビット)を超えるものに限る)
にそれぞれ3年以上
こちらの免除制度に関しては、他の制度と違い非常に細かな条件を設定しているため分からないことも多いでしょう。
まずは試験を実施・管理している「一般財団法人日本データ通信協会」へ、メールや電話などで問い合わせしてみるのも大切です。
認定学校の修了による免除
認定学校の終了による免除とは、工事担任者に関係している電気通信の課程を設定している高等学校などで、特定科目を修了もしくは修了見込みであれば、一部科目を免除できる制度のことです。
つまり、電気通信関係の科目がある高等学校・専門学校などへ通っていて、特定科目を修了していたり修了する見通しが立っていたりしている場合は、「基礎」を免除できます。
勘違いしやすい条件として、卒業証明書を提出すれば免除されると考える方もいるのではないでしょうか。
認定学校の終了による免除では、修了証明書でなければいけませんので必要書類を間違えないよう気を付けてください。
試験の3か月前から勉強を始めよう
工事担任者は、前半で紹介したとおり合格率が低く難易度の高い資格試験です。また、どの科目も専門性が高く、電気通信技術をはじめセキュリティや法規、接続工事など10科目以上から出題されます。
試験範囲が広く深い工事担任者の試験に合格するには、少なくとも試験当日から3ヶ月前には勉強を始めましょう。
また、仕事で忙しい方や免除科目が無い・初めて受験するといった方は、5ヶ月程前から準備するのもおすすめです。
工事担任者は理論や公式だけでなく、計算問題もあるので求められる知識や内容が各科目によって変わります。
工事担任者総合種のおすすめのテキスト

工事担任者2018秋AI・DD総合種実戦問題
おすすめ度:★★★★☆
「工事担任者2018秋AI・DD総合種実戦問題」は、タイトル通り実践的な内容をコンセプトとしていて、過去3年分の問題と、基礎を理解した方向けに分かりやすく解説を行っています。
ですので、1冊で総まとめができるお得なテキスト・問題集です。ただし、全くの初心者に向けた構成ではないため、別途入門者向けテキストも必要でしょう。
この本の口コミ
これだけで2018年11月受験して合格しちゃいました!
この参考書は、3か年分の過去問があるのですが、最初はこれだけでは、ダメかなと思いましたが、実際に受験してみたところ、合格しちゃいました。点数は、全部7割以上取れてました。少し少ないかと思いましたが、この参考書を信じて、暗記するだけで合格できちゃいます。
私は、9月下旬から取り組みましたが、1ヵ月でとりあえず1回全数やりおえ、その後、2回目を取り組み、理解できていない箇所に絞った学習を進めたところ、2018年11月下旬の試験を受験し、12月に合格発表で見事合格を勝ち取りました!ありがとうございました!
アマゾン大好きマン
全く同じ問題が試験に出ました
2018年11月に総合種を受験しました。この一冊のみの勉強で合格点に達しました。本書はあくまでも問題集なので、原理の説明は少ないです。馴染みのないISDN通信の内容は、初見ではかなり面を食らうのではないかと思います。ただ、工事担任者試験は過去問率が高いため、本書の問題を全て解いて、どうしてもわからない問題は解答を丸暗記すれば、容易に合格するのではないでしょうか
すいかかえ
工事担任者科目別テキスト わかるAI・DD総合種「技術・理論」
おすすめ度:★★★★☆
「工事担任者科目別テキスト わかるAI・DD総合種「技術・理論」」は、特に出題・試験範囲が広く点数を落としやすい技術・理論科目に特化したテキストです。
文字による解説だけでなく、イラストも交えているので苦手な方にも配慮した構成となっています。総合的なテキストの補足・補強としておすすめの1冊です。
この本の口コミ
わかりやすい
初版を持っていたのですが、試験対策に購入。最近の試験問題にマッチしていて、「工事担任者 2016秋AI・DD総合種実戦問題」の解説不明点の参考書として使ってます。私は、購入して良かったです。
AmeOtoko
実践問題の補足に使いました。
試験に対してテキストとして使用しました。イメージがつかみ易いイラストで、足りない部分はネットで検索してました。また、過去問のトラヒック計算をすべてカバーしてます。
洗濯当番
まとめ

以上、工事担任者総合種についてご紹介してきました。
工事担任者総合種は難易度の高い試験ですが、取得すれば扱える業務内容に幅が出る、需要の高い資格ので頑張って試験を突破しましょう。試験対策についても紹介しましたので、本記事を活用してぜひ工事担任者総合種を取得してください。
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