
異業種への転職を考えている方や電気通信工事に従事している方の中には、電気通信主任技術者と呼ばれる資格に興味関心があるのではないでしょうか。
そこで今回の記事では、電気通信主任技術者の内容を知りたい方へ向けて、資格概要や試験対策をはじめ、電気通信主任技術者を活用した仕事についても紹介します。電気通信主任技術者の仕事内容や年収を知ろう
電気通信工事と電気主任技術者は何が違うんですか?
電気通信工事は、通信設備の作業を行う仕事全般を指します。一方、電気主任技術者は、通信設備の管理や現場管理を行う監督業務が主な役割です。
電気通信主任技術者の資格を必要とする仕事は多数あり、携帯電話基地局での現場管理や電波測定や分析などの求人があります。
また、今後も通信設備関係は、発展が期待されるので長期にわたって需要のある仕事です。
電気通信主任技術者には2種別ある
電気通信主任技術者は、「伝送交換主任技術者」と「線路主任技術者」の2種別に分かれています。資格試験を受ける際は、どちらか一方の資格を選択します。
電気通信に関わる資格という点では共通していますが、携わることのできる通信設備について大きく異なっています。伝送交換主任技術者
電気通信主任技術者の伝送交換主任技術者は、事業用電気通信設備で必要な資格です。
そもそも事業用電気通信設備とは、インターネット・Webサイトを支えるサーバ設備や電話回線など、有線・無線問わず伝送(データの送受信)を行う一定規模以上の設備を指します。
また、社会的に影響の大きな通信設備を事業用電気通信設備と呼びます。
伝送交換主任技術者の試験範囲は、線路主任技術者よりも広い傾向です。
しかし、電気通信工事の経験がある方や、通信技術系の資格を保有している方であれば、やや難易度の高い資格といえるでしょう。
線路主任技術者
線路主任技術者は、鉄道などの線路ではなく通信ケーブルに関する管理、現場監督業務を指します。たとえば、海底ケーブルや通信マンホールなど構造物全般のことです。
取り扱っている通信ケーブルは、光ファイバーや電話回線などとなっています。
仕事は通信設備の現場の管理者になること
電気通信主任技術者の主な仕事内容は、事業用通信設備の運用管理や、通信工事の現場管理業務です。電気通信工事を行うのではなく、管理者としての立場で仕事に携わります。
そして、事業用電気通信工事および設備機器の運用を行う事業者は、電気通信主任技術者有資格者を配置しなければいけないため、さまざまな現場で必要とされる職種でもあります。
年収は400万円程度
電気主任技術者の年収は、企業や実務経験、年齢によっても変わりますが、35~40代の場合約470万円です。また、女性は年収約330万円で推移しています。
安過ぎる年収ということでもありませんので、異業種からの転職をはじめ現場から管理業務へ移りたい場合に年収面で大きな問題はないといえるでしょう。
また、賞与については各企業の業績や、方針によって変わるものの60~80万円の水準です。
仕事がなくならず、人材不足なので就職や転職で有利
事業用電気通信設備の設置や運用を行う事業者は、法令によって電気通信主任技術者有資格者を配置する必要があります。
通信インフラが求められない・なくならない限り、電気通信主任技術者の仕事も継続的に存在するといえるでしょう。
また、有資格者でなければ携わることのできない仕事でもあるので、常に人材不足気味でもあります。
通信技術に関心がある方や、電気通信工事に携わっていて管理業務にも強い関心がある方などは就職・転職を目指してみるのもおすすめです。ただ、次の項目で紹介する資格取得をしなければいけないので、まずは資格概要や試験対策から始めましょう。
試験の詳細について詳しく解説!
電気通信主任技術者は国家資格ですか?
国家資格です。管轄は総務省で、1985年に電気通信主任技術者制度が制定されました。
続いては電気通信主任技術者の資格概要を、基礎から紹介します。電気通信主任技術者は、2種類の資格に分かれているため、それぞれの特徴を知ることも重要です。
それぞれの種別の4つの試験科目を紹介
伝送交換主任技術者と線路主任技術者で受験する試験科目が異なります。それぞれの資格でどのような科目を受験するのか説明します。
伝送交換主任技術者
- 法規
- 伝送交換設備及び設備管理
- 電気通信システム
- 専門的能力(5科目から1つ選択する)
伝送交換主任技術者の試験科目は、法規と伝送交換設備及び設備管理、電気通信システム、専門的能力の4つです。
専門的能力の試験は、伝送と無線、交換、データ通信、通信電力の中から1科目を選択して受験します。
事前にどの科目を受験するか申告する必要はないので、問題を見て、高得点を狙えそうな科目を選んでください。
線路主任技術者
- 線路設備及び設備管理
- 法規
- 電気通信システム
- 専門的能力(3科目から1つ選択する)
線路主任技術者の試験科目は、線路設備及び設備管理、法規、電気通信システム、専門的能力の4つです。
専門的能力の試験は、通信線路、通信土木、水底線路の中から1科目を選択して受験します。
こちらも事前にどの科目を受験するか申告する必要はないので、問題を実際に見てから、高得点を狙えそうな科目を選びましょう。
資格取得の難易度や合格率
未経験者は一発合格を目指せますか?
人によって合格の可能性は変わります。ただ、全く通信関係の知識を持っていない場合は、2回・3回といった受験も視野に入れる必要はあるでしょう。
電気通信主任技術者は、4科目それぞれの点数が100点満点中、60点以上で合格となります。全科目で6割以上の点数を、確保するわけではない点にも注意しましょう。
合格率は例年20%前後で推移していて、難易度の高い資格として知られています。
しかし、通信技術に関する専門的知識を持っている方や、趣味で通信関係の技術に触れている方、電気通信工事の作業者として仕事に就いている方には、やや難しい資格といえるでしょう。
受験に必要となる資格はなく、誰でも受験できる
電気通信主任技術者の受験資格は特にありませんので、通信関係の実務経験がない方でも受験できます。電気通信の仕事へ転職したい未経験者の中で、管理業務へ関心がある方は電気通信主任技術者の資格取得を目指すのもおすすめです。
試験日程・受験できる会場
電気通信主任技術者は、1月と7月の年2回試験を実施しています。また、受付期間が設定されているため、定期的に一般社団法人日本データ通信協会、「電気通信国家試験センター」のWebサイトで確認しましょう。
ちなみに7月の試験の場合は受付期間4月上旬~5月上旬頃で、1月の試験の場合は受付期間10月上旬~11月上旬の傾向です。
また、受験会場は15都道府県に限られています。
- 札幌
- 仙台
- さいたま
- 東京
- 横浜
- 新潟
- 金沢
- 長野
- 名古屋
- 大阪
- 広島
- 松山
- 福岡
- 熊本
- 那覇
科目免除制度がある
電気通信主任技術者には、科目免除制度が用意されています。
内容は多岐にわたっているので、一般社団法人日本データ通信協会「電気通信国家試験センター」の、科目免除に関する条件や内容を確認するのが大切です。
また、科目免除制度を大きく分けると、学歴と資格、科目合格によって電気通信主任技術者の各科目が免除されます。受験の申し込みや問い合わせ
申し込み方法は、郵送とインターネットの2種類から選ぶことができます。webサイトでの操作や確認が苦手な方は、郵送をおすすめします。
しかし、申請書類を「電気通信国家試験センター」から取り寄せる手間などを考慮すると、一般的にはインターネット申請がいいでしょう。
インターネット申請は、「電気通信国家試験センター」内で指示に従って氏名や住所などを入力するのみで、受験申請完了です。
受験手数料は、全科目を受験する場合18,700円となります。また、一部科目が免除されている場合は、9,500円~18,000円まで抑えることができます。
試験対策方法のまとめ
ここからは電気通信主任技術者の試験対策に関する、注意点や効率的な学習方法、勉強時間などについて解説します。
勉強するうえでの注意点やコツ
電気通信主任技術者の試験対策を始める場合は、理解と過去問がポイントとなります。用語や説明の暗記だけでは、合格の難しい試験内容です。
そのため参考書をベースに、理解することを意識しましょう。
しっかりと理解しながら勉強しよう
電気通信主任技術者の勉強するうえで欠かせないのは、各科目の理解です。計算問題にかぎらず論理回路などどの問題も、仕組みや原理を問われる内容となっています。
そのため、単に公式や用語を暗記しただけでは、試験に対応するのは難しいでしょう。
また、ノートに用語や説明を書き写したり、繰り返し書いたりする勉強方法も非効率的です。文章を見るのではなく、読むことを意識しましょう。
電気通信主任技術者の場合は、4科目の参考書を見るだけでなく、意味や仕組みを理解しながら学習を進めることを基本方針としましょう。
過去問を有効活用しよう
電気通信主任技術者だけにかぎらず、資格試験対策に過去問も欠かせません。過去問を解くことで、本試験の出題傾向や自身の理解度を確認できるようになります。
過去問は3年~5年分を用意し、試験日まで繰り返し解きます。また、過去問の中で間違えた問題が発生した場合は、参考書で何が間違っていたのか確認しながら、正しい内容を覚えます。
必要な勉強量と勉強期間
勉強期間は、一般的に3ヶ月は必要とされています。また、参考書を読み込みながら過去問を解き、間違えた問題を参考書で復習を繰り返します。
参考書については、4科目それぞれ販売されているので全ての参考書を用意し、勉強時間を意識しながらスピーディに読み込むのが大切です。
最初のうちは、分からない用語や説明ばかりで、ダラダラと参考書を眺める可能性もあるかと思います。
しかし、時間をかければ良いということではありませんので、理解できる部分から学習を進めていきましょう。
おすすめの参考書やテキスト
電気通信主任技術者の試験対策としておすすめの参考書は、株式会社オーム社から発行されている以下の書籍です。
- 電気通信主任技術者試験 これなら受かる 電気通信システム 改訂2版
- 電気通信主任技術者試験 これなら受かる 伝送交換設備及び設備管理 改訂2版
- 電気通信主任技術者 これなら受かる 専門的能力(伝送交換主任技術者)
電気通信主任技術者試験 これなら受かる 電気通信システム 改訂2版
おすすめ度:★★★★★
広い試験範囲の中から繰り返し出題されている問題にフォーカスを当てて、詳しく解説している参考書。12回分の過去問も分野ごとに分類して解説しているので、苦手分野を集中的に勉強することができます。
この本の口コミ
この本を覚えれば合格
カポー
合格の一助にはなる
radio1ban
電気通信主任技術者試験 これなら受かる 伝送交換設備及び設備管理 改訂2版
おすすめ度:★★★★☆
よく出る問題を厳選して詳しく解説している良書。6年分の過去問も掲載しているので、参考書としても問題集としても活用できます。
この本の口コミ
これだけでOK
りぷりぷ
なんかよかったよ!
Amazonカスタマー
電気通信主任技術者 これなら受かる 専門的能力(伝送交換主任技術者)
おすすめ度:★★★★☆
出題傾向と対策に焦点を当てて詳しく解説している参考書。過去問も掲載しているため、具体的な問題を解きながら実力を身につけていくことができます。
この本の口コミ
専門科目の勉強に直接有効なのはこれ一冊しかない、といえる問題集
おさる
伝送関係の専門科目がすべて網羅されています
甑
上記の参考書を揃えることで、伝送交換主任技術者4科目の試験範囲を押さえることができます。また、線路主任技術者を選択する場合は、法規と電気通信システム以外異なる内容です。
たとえば日本理工出版会が発行している以下の書籍がおすすめです。
- 電気通信主任技術者試験対策 線路設備及び設備管理
- 電気通信主任技術者通信線路テキスト(専門的能力の1つ)
- 残り2科目は伝送交換主任技術者で紹介した共通内容の参考書
電気通信主任技術者試験対策 線路設備及び設備管理
おすすめ度:★★★★☆
思わず見逃してしまう細かなポイントなどにも注目し、得点力を高められるように工夫してまとめられています。合格に近づくためにもぜひ活用したい良書です。
この本の口コミ
これ一冊でOK
K Tailor
これでいけます!
じょん
電気通信主任技術者通信線路テキスト
おすすめ度:★★★★☆
合格に必要な知識をコンパクトにまとめている参考書。試験まで時間が迫っているときにもおすすめです。時間に余裕があるときは、何度も繰り返して習得しましょう。
この本の口コミ
試験に合格しました!
どんなもんだい
これで合格しました
じょん
どれもポイントごとに効率よくまとめているのが特徴です。また、イラストが必要な部分には、回路図などを示してしています。
専門的能力に関しては、伝送交換主任技術者と線路主任技術者どちらも複数科目から選択するので、選択予定の参考書・テキストを探しましょう。
まとめ
以上、電気通信主任技術者の資格概要や、仕事内容について解説しました。
電気通信主任技術者は、通信設備機器や通信ケーブルの工事現場などで必要な管理系の資格です。また、合格率20%前後ですので難易度は高めですが、未経験者も試験対策を行うことで合格を目指すことは可能です。
電気通信工事の管理業務へ就きたい方は、今回紹介した電気通信主任技術者(伝送交換主任技術者もしくは線路主任技術者)の試験対策なども参考にして準備を始めてみてください。