
消防設備士になるメリット

消防設備士になるメリットとして、以下の3つが挙げられます。
- 消防設備の点検や工事の仕事に携わることができる
- 将来的な需要がある
- 社会貢献性の高い仕事に携わることができる
次からは以上の3つのメリットについて、詳しく解説していきます。
消防設備の点検や工事に携わることができるようになる
消防設備士とは、消防設備の点検や工事を行うために必要になる国家資格のことで、消防設備の点検や工事は、消防設備士の資格を保有している者のみが行うことができる独占業務です。
独占業務とは、その資格を保有している者のみが行うことができる業務のことで、医師が行う医療行為や弁護士の訴訟代理も独占業務に当たります。
消防設備の点検や工事の仕事は消防設備士の資格がなければ行うことができないため、就職する上で大変有利になるのです。
将来的な需要がある
消防設備士は現在需要が高いだけでなく、将来的な需要も見込める資格です。
なぜなら、スプリンクラーや自動火災報知器、消化器といった消化設備は、不特定多数の人が出入りする建物や、規模の大きな建物であれば必ず設置しなければならないからです。
例えば、学校や病院、工場、飲食店などには、必ず消防設備を設置しなければならないと法令で定められています。
また、消防法第17条3の3には、消防設備を点検する際は消防設備士の有資格者にさせなければならないと定められています。
つまり、不特定多数が出入りする建物や規模の大きな建物が作られれば消防設備士を設置する必要があるため、今後も一定の需要が見込めることは間違いないのです。
社会的に大きな意味のある仕事に携われるようになる
消防設備は、万が一火災が起きたときに、迅速かつ適正に消化を行うために必要になるものです。
消防設備士の仕事は、人命を救うことにも関わる社会的に大きな意味のある仕事であると言えるでしょう。
消防設備士の業務内容

次からは消防設備士の具体的な業務内容と、消防設備士を必要とする施設について解説していきます。
消防設備士の業務
消防設備士の業務は、甲種消防設備士と乙種消防設備士で異なっています。
- 甲種:
消防用設備又は特殊消防用設備等の工事、整備、点検を行う - 乙種:
消防用設備等の整備、点検を行う
甲種消防設備士と乙種消防設備士の違いは、工事ができるかどうかと、特殊消防用設備等を扱えるかどうかです。
甲種消防設備士のみが扱える特殊消防用設備等とは、超高層建築物、巨大複合建築物などの特殊な防火対象物に設置する消防設備や、新技術を用いた消防設備のことです。
消防設備士を必要とする施設
火災に備えるためにも、消防設備士は建物の消防設備を定期的に点検・整備しなくてはいけません。
また、必要に応じて、工事を実施して消防設備を備え付ける必要もあります。
消防法第17条1項には、以下の建物・施設に消防設備を設置しなければならないと定められています。
- 学校
- 病院
- 工場
- 事業場
- 興行場
- 百貨店
- 旅館
- 飲食店
- 地下街
- 複合用途防火対象物
- その他の防火対象物で政令で定めるもの
消防設備士の資格の種類

消防設備士の資格には、甲種と乙種があると説明してきました。
そして、甲種と乙種は、さらに第1類から第7類と特類に分類されているので、それぞれの資格の特徴について知っておくことが大切です。
次からは、甲種消防設備士と乙種消防設備士のそれぞれの分類の違いや、分類ごとの具体的な業務内容を解説していきます。
消防設備士には甲種・乙種と第1~7類・特類の分類がある
甲種消防設備士は、第1類から第5類と特類の6つに分類されています。そして、乙種消防設備士は、第1類から第7類までの7種類に分類されています。
それぞれの分類では扱える消防設備の種類が異なります。次からは、それぞれの分類と扱える召募設備について解説していきます。
甲種
再度説明すると、甲種消防設備士は消防用設備又は特殊消防用設備等の工事、整備、点検を行うのが仕事です。分類は第1類から第5類と、特類があります。
甲種消防設備士の方が乙種消防設備士よりも行える業務が高度で範囲が広いため、より専門性の高い資格であると言えます。
消防設備士を目指すなら、最終的には甲種消防設備士になることを目標にするといいでしょう。
乙種
こちらも再度説明しておくと、乙種消防設備士は消防用設備等の整備、点検を行うのが仕事です。分類は第1類から第7類まであります。
乙種消防設備士は、甲種消防設備士とは異なり、消防設備の工事を行うことができず、特殊消防設備等を扱うこともできません。しかし、受験資格がなく誰でも受験できるため、消防設備士を目指すなら最初に乙種消防設備士資格の取得を目指しましょう。
第1類
第1類が扱える消防設備は以下の通りです。
- 屋内消火栓設備
- 屋外消火栓設備
- スプリンクラー設備
- 水噴霧消火設備
- パッケージ型消火設備
- パッケージ型自動消火設備
- 共同住宅用スプリンクラー設備
第1類は、上記のような水を使って消火を行う設備を扱うことができる資格です。
スプリンクラーをはじめとする水を使う消火設備は、ビルやマンションなど、非常に多くの建物に設置されています。
そのため、需要は高く、取得しておくと就職で有利になるのは間違いありません。上下水道などの配管工事を行う会社であれば、特に需要の高い資格であると言えます。
第2類
第2類が扱える消防設備は以下の通りです。
- 泡消火設備
- パッケージ型消火設備
- パッケージ型自動消火設備
第2類は、泡を使って消火を行う設備を扱うことができる資格です。泡を使った消火方法は、特に大規模建築部を消火する際に有効です。
しかし、泡を使った消火方法は使用する建物が限定的であるため、需要はそれほど高いとは言えないでしょう。
第3類
第3類が扱える消防設備は以下の通りです。
- 不活性ガス消火設備
- ハロゲン化物消火設備
- 粉末消火設備
- パッケージ型消火設備
- パッケージ型自動消火設備
上記のような消火設備は、気体や粉を使って消火をする際に使用されます。
気体や粉を使った消火は、美術館や博物館、電気室、電気通信機室、精密機械室など火災が起き際に行われる方法です。
第4類
第4類が扱える消防設備は以下の通りです。
- 自動火災報知設備
- ガス漏れ火災警報設備
- 消防機関へ通報する火災報知設備
- 共同住宅用自動火災報知設備
- 住戸用自動火災報知設備
- 特定小規模施設用自動火災報知設備
- 複合型居住施設用自動火災報知設備
自動火災報知設備とは、火災が起きたときに発生する火や煙を感知し、ベルを鳴らして建物内に火災の発生を知らせる装置です。
消防法と条例により、一定面積以上の建物や店舗がある雑居ビル、重要文化財には設置が義務付けられています。
そのため、火災報知器が設置されている建物は多く、4類の需要は高いです。
第5類
第5類が扱える消防設備は以下の通りです。
- 金属製避難はしご
- 救助袋
- 緩降機
第5類は消火を行うために設備ではなく、火災が起きたときに避難や救助を行うために必要な設備です。
消化器や自動火災報知設備、スプリンクラーなどと比べると、避難はしごや救助袋、緩降機が設置されている建物は多くありません。
そのため、第5類はそれほど需要は多いとは言えませんが、避難はしごや救助袋、緩降機は人命救助と密接に関わる重要な設備です。
第6類
第6類が扱える消防設備は消火器のみです。
- 消火器
第6類は甲種にはなく、乙種にしかない資格となっています。消火器は言うまでもなく最も身近な消火設備です。
一般住宅には設置義務はないものの、消化器を設置している住宅は少なくありません。乙種は誰でも受験できるので、まずは身近な消火設備の点検などを行いたいなら第6類を取得してみましょう。
第7類
第7類が扱える消防設備は漏電火災警報機のみです。
- 漏電火災警報機
第7類は甲種にはなく、乙種にしかない資格となっています。
漏電火災警報器とは、電気配線や電気機器の漏電を検知して、警報する装置のことです。電気配線や電気機器の絶縁や不導体が損傷していると、感電や発火の原因になってしまいます。
特類
特類とは、特殊消火設備を扱うための資格です。甲種消防設備士のみ特類が設けられています。
特殊消防用設備等の例として、以下のようなものがあります。
- 加圧防煙システム
- ドデカフルオロ-2-メチルペンタン-3-オン(FK-5-1-12)を消化剤とする消化設備
- 複数の総合消化盤を用いた総合消防防災システム
- 火災温度上昇速度を監視する機能を付加した防災システム
- インバーター制御ポンプを使用するスプリンクラー設備
- 空調設備と配管を兼用するスプリンクラー設備
- 閉鎖型水噴霧ヘッドを使用した消火設備
- 大空間自然給排煙設備
- 放射時間を延長した窒素ガス消火設備
上記の特殊消防設備等を設置しているのは、日本全国に64の施設しか存在しません。そのため、極めて限られた需要しかないので、最初から特類を取得するという人は少ないでしょう。
就職を見越してあらかじめ取得しておくのではなく、特殊消防設備等を設置している施設に就職することになってから取得するための資格であると言えます。
需要が高いのは「乙種6類」「甲種4類」「甲種1類」
これまで紹介してきた資格の中で、特に需要が高いのは乙種6類、甲種4類、甲種1類の3つです。
乙種6類は消火器、甲種4類は自動火災報知器、甲種1類は消火栓やスプリンクラーなどの水系消化設備を扱う資格であり、どの消化設備も多くの施設に設置されています。そのため需要が高く、消化設備士としての就職を目指すなら上記の3つの資格を取得することをおすすめします。
甲種4類と甲種1類は受験資格があるため、まずは受験資格のない乙種6類から取得してみてはいかがでしょうか。
消防設備士の試験概要

消防設備士の資格を取得するには、試験を受ける必要があります。そのため、まずは消防設備士試験の概要について知った上で、対策を立てる必要があります。
次からは消防設備士の試験の概要として、以下の3つを解説していきます。
- 受験資格
- 難易度と合格率
- 筆記試験の免除
受験資格
甲種消防設備士と乙種消防設備士の受験資格は異なります。乙種消防設備士の受験資格は異なるので、誰でも受験することができます。
甲種消防設備士の受験資格は以下5つです。
- 大学、短大、高専等で機械、電気、工業化学、土木又は建築に関する学科又は課程を修めて卒業した者
- 大学、短大、高専等で機械、電気、工業化学、土木又は建築に関する授業項目を履修し、15単位以上修得した者(単位制でない学校の場合は、授業時間数を換算する。)
- 一定の実務経験を有する者
- 一定の資格・免状を有する者
- 特類においては甲種第1類から第3類までのいずれか一つ、甲種第4類及び甲種第5類の3種類以上の免状の交付を受けている者
「一定の実務経験を有する者」とは、以下の4つのいずれかに該当する者を指します。
- 乙種消防設備士免状の交付を受けた後2年以上消防設備等の整備の経験を有する者
- 消防用設備等の工事の補助者として、5年以上の実務経験を有する者
- 消防行政に係る事務のうち消防用設備等に関する事務について、3年以上の実務経験を有する者
- 昭和41年4月21日以前において、工事整備対象設備等の工事について3年以上の実務経験を有する者
「一定の資格・免状を有する者」とは、以下の14の資格・免状のいずれかを保有している者を指します。
- 技術士第2次試験に合格した者
- 電気工事士
- 電気技術主任者
- 理学、工学、農学又は薬学のいずれかに相当する分野において、博士又は修士の学位を有する者
- 専門学校入学者資格検定試験の機械、電気、工業化学、土木又は建築に関する合格者
- 管工事技師
- 高等学校の工業の科目の教員免許状を有する者
- 無線従事者
- 建築士
- 配管技能士
- ガス主任技術者
- 給水技術者
- 条例設備士
- 甲種設備士
難易度と合格率
合格率を見ることで、消防設備士の難易度を知ることができます。消防設備士は分類別に受験するので、合格率も分類別に異なっています。
- 甲種第1類:25.5%
- 甲種第2類:35.1%
- 甲種第3類:30.4%
- 甲種第4類:32.3%
- 甲種第5類:34.5%
- 甲種特類 :23.2%
- 乙種第1類:30.8%
- 乙種第2類:36.6%
- 乙種第3類:29.9%
- 乙種第4類:32.4%
- 乙種第5類:42.5%
- 乙種第6類:37.9%
- 乙種第7類:59.1%
以上の合格率を見ると、甲種も乙種も平均合格率は30%前後であることがわかります。また、甲種であるからといって、乙種に比べて合格率が低いと言うわけではないようです。
参考までに、司法試験や司法書士試験、公認会計士試験などの難関国家資格の合格率は10%未満です。消防設備士と同じく合格率30%程度の試験だと、測量士補や建築施工管理技士などがあります。
合格率が30%の試験は、国家資格の中では中程度の難易度であると言えるでしょう。
試験日や試験会場
消防設備士の試験は4月~9月に1回、10月~3月に1回の全2回あり、試験会場によって試験日が異なります。
試験会場はすべての都道府県にありますが、住民票がない都道府県でも受験することができるので、アクセスしやすい会場を選びましょう。
受験の申請は、受験を希望する都道府県の消防試験研究センター支部宛におこないます。
受験の手続き
各都道府県の消防試験研究センター支部もしくは消防本部で受験願書を取り寄せ、受験料を払い込んだ郵便振替払込受付証明書を添付して提出します。
甲種消防設備士を受験する場合は、受験資格を証明する書類も一緒に提出しましょう。
なお、電子申請も可能なので、願書を取り寄せる手間と書類提出の手間を省くこともできます。
- 甲種消防設備士:5700円
- 乙種消防設備士:3800円
筆記試験が免除される場合がある
甲種消防設備士と乙種消防設備士のいずれかの分類に合格していると、他の分類を受けるときに筆記試験の科目が一部免除されます。
具体的には、「消防関係法令の共通部分と基礎知識」または「消防関係法令の共通部分」が免除されます。
ただし、乙種消防設備士の分類に合格しても、甲種消防設備士の筆記試験は免除にならないので注意しましょう。
例えば、乙種消防設備士第1類に合格すると、乙種消防設備士の第2類から第7類までの筆記試験が免除されます。
しかし、甲種消防設備士の中の1つの分類に合格すると、甲種消防設備士の他の分類に加えて、乙種消防設備士の全分類の筆記試験も免除されます。
「消防関係法令の共通部分と基礎知識」が免除される場合、すでに取得している消防設備士の分類によって、どの分類が免除されるかは異なります。
具体的には、以下の通りです。
- 甲種第1類取得済
-甲種第2類・甲種第3類・乙種第2類・乙種第3類が免除
- 甲種第2類取得済
-甲種第1類・甲種第3類・乙種第1類・乙種第3類が免除
- 甲種第3類取得済
-甲種第1類・甲種第2類・乙種第1類・乙種第2類が免除
- 甲種第4類取得済
-乙種第7類が免除
- 甲種第5類取得済
-乙種第6類が免除
- 乙種第1類取得済
-乙種第2類・乙種第3類が免除
- 乙種第2類取得済
-乙種第1類・乙種第3類が免除
- 乙種第3類取得済
-乙種第1類・乙種第2類が免除
- 乙種第4類取得済
-乙種第7類が免除
- 乙種第5類取得済
-乙種第6類が免除
- 乙種第6類取得済
-乙種第5類が免除
- 乙種第7類取得済
-乙種第4類が免除
消防設備士の試験対策

消防設備士試験は、「難易度と合格率」の見出しでも紹介したように合格率が3割程度であるため、しっかりと試験対策をして受験に臨む必要があります。
次からは、消防設備士の試験対策として、おすすめのテキストや過去問を用いた勉強方法などについて詳しく解説していきます。
3か月前から勉強を始めよう
合格に必要な時間は人によって異なりますが、知識ゼロの状態から勉強を始めるとすると、目安としては80時間から130時間だとされています。
平日に30分〜1時間、休日に2〜3時間ずつ勉強したとすると、勉強期間は3ヶ月程度となるでしょう。
そのため、知識ゼロの状態から消防設備士の勉強をする場合であれば、3ヶ月前から勉強をしておくと良いでしょう。
「工藤本」と呼ばれている有名なテキストで勉強しよう
消防設備士のテキストや問題集を選ぶなら、「工藤本」と呼ばれる、工藤政孝先生の本がおすすめです。
工藤先生は消防設備士のテキストや問題集を多数出版されている方で、わかりやすく解説が丁寧だと評判が高いです。
工藤本の特徴として、ゴロ合わせがあることが挙げられます。消防設備士は暗記重視の傾向が強い試験なので、ゴロ合わせで覚えることで効率的に知識を吸収していくことができます。
特に、筆記試験に関しては工藤本だけで対策できてしまうとされており、多くの合格者に支持されています。
過去問にも取り組もう
消防設備士を受験するなら、過去問は絶対に解かなければなりません。なぜなら、消防設備士試験は過去問と似た問題が毎年出題されるからです。
市販の問題集だけでも確かに対策をすることはできますが、本試験と同じ形式に慣れておくことが大切です。
特に、試験直前になったら時間を測って過去問を解いて、試験時間内に解き終わるのかどうかを確かめておく必要があります。
まとめ

消防設備士の資格について、資格を取得するメリットや各分類の特徴、試験概要、試験対策などを解説していきました。
興味がある方は、ぜひ工藤本や過去問を使って試験対策をしつつ、乙種消防設備士試験から受験してみてください。
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